2794.2015年1月6日(火) 今年懸念される世界10大リスク

 一昨日の本欄にお2人の語り部が亡くなられたことを哀悼の意を込めて採り上げたが、何と今朝の朝日と日経のコラム、「天声人語」と「春秋」に揃ってそのお2人の地道な功績を紹介している。お2人が揃って自分たちの体験は次代へ伝えられるべきであると確信し、行動しておられたことに改めて敬意を表したい。こうして時代の経過とともに、戦争体験者は少なくなり、真実を伝える人々が減っていく。「春秋」は「苦難の道を歩んだ先人たちの言葉は、書物や映像とはまた違った迫力で受け取る側の胸に響く」と伝えている。

 耳を澄ませると戦争の足音が聞こえるようになってきた安倍政権の外交、防衛政策の下に、反戦活動で献身的に大きな役割を果たしてくれた、これら戦争体験者が世を去って行ったら、これから反戦・非戦の動きは立ち止まることになるだろう。気がかりなことである。

 さて、政治リスクの調査をしているアメリカのコンサルティング会社ユーラシア・グループが「2015年10大リスク」なるものを発表した。これにはやや抽象的な事象が多い。そのトップにランクされたのが、何と「ヨーロッパの政治」である。大統領を決められず総選挙を控えたギリシャや、スペイン、イギリスやフランスなどEUから離脱の声が拡大して、結果的に政権の選択肢を狭めると予想され、それが大きなリスク要因とされている。第2位が「ロシア」である。ウクライナ問題を巡りアメリカとの対立が深まり、中国に接近しイランの核開発への対応などの国際協調にひびが入る可能性があると見られている。第3位は「中国経済減速の影響」である。

 その他に6位にランクされた「現職指導者の弱さ」というのが異色だと思う。なるほど現在世界の指導者が思うようにリーダーシップを発揮できていない現状は、それは確かに世界のリスクであるには違いない。オバマ大統領しかり、キャメロン英首相しかり、オランド仏大統領しかりである。中国の習近平国家主席にしても一見権力を掌握しているように見えるが、実情は周囲の党幹部にいつ寝首を掻かれるのではないかと疑心暗鬼で、それが最近汚職を理由に幹部追放を強行している大きな理由でもある。

 ところで、昨日八王子に住んでおられる近藤幸一さんに、先日の出版記念会のDVDと、日本共産党本部から戦前の活動がスパイ行為だったと名指しされ、名誉棄損で裁判沙汰になった元共産党員・故伊藤律関連資料を送ったところ、随分喜んでお礼の電話をもらった。

 後者の資料とは、元日本共産党員伊藤律に関するものである。伊藤が戦前中国にいた時反共的スパイ活動をしたと書かれた松本清張著「日本の黒い霧」が、伊藤とその家族にとって名誉棄損に当たるとして著者松本清張と出版社・文藝春秋社を訴えたが、松本亡き後に和解が成立した。送ったのは、出版した文藝春秋社の説明書と文春出版総局長の伊藤家に対する謝罪文のコピーで一昨年ある筋から入手したものである。偶々近藤さんは、戦時中国鉄八王子駅勤務の時に伊藤律と顔馴染みになり、殊更伊藤には格別の思い込みがあり、このコピーの存在には驚いておられた。

 今では伊藤律を知っている人はあまり多くないと思うが、少しでも戦前・戦後の社会主義運動や、戦前のスパイ事件を知っている人には、記憶に残るひとりである。多分近藤さんには喜んでもらえる資料だと思ってお送りしたので、喜んでいただいて取り敢えずは良かった。

2015年1月6日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : mr-kondoh.com