来年度国家予算が大筋決まった。総額96.3兆円である。年々雪だるま式に膨れ上がっている。国の借金がどんどん溜まる中で、こんなに大風呂敷を広げて大金を使って大丈夫なのだろうかと心配になってくる。歳入は税収が増えると予想されているとは言え、歳出にはとても及ばない54.5兆円である。歳出のうち最も嵩むのは社会保障費で31.5兆円である。少子高齢化の傾向が年々高まるとこの割合はもっと高まる。どうやって財源を補うのか、真剣に考えなければならない。
そんな中で国民厚生年金の資産運用についても理解できない話が進んでいる。年金基金をこれまでの債権運用から株式へ切り替えるという。つまり、ノーリスク・ノーリターンからハイリスク・ハイリターンに変わるわけである。株式市場が順調ならまだ好い。だが、仮に再びリーマン・ショックのような不意打ちを食らったら肝心な国民の年金はどうなるのか。昨年安倍首相がロンドン訪問の際、記者会見でアベノミクス成長に力を注ぐので、日本の株式市場に投資して欲しいと述べたが、この発言を受けて外資は日本が政府資金を株式市場に注ぎ込むと理解した。これが政治的な圧力となって、年金を管理している年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)は、なくなっては元も子もなくなる年金資産をリスキーな株式へ投入することを決めたのではないかと推測する専門家もいる。
問題はこの事実自体より、このことを国民にまったく知らせず、GPIFの密室内で一部の人間だけで決めてしまったことである。しかも政府の意向を受けた形になっている。これでは独立行政法人ではなく、政府が決めたことになり、国民へ責任を果たしていないばかりでなく民主国家としての体を成さない。
他にも政府は国民に知らせるべき事柄を公表せず、意見を聞いたり当然行うべき行為を無視して、国民を欺いたことが度々あった。あまり組織の実態について国民が詳しく知らないことを好い事に、またもや国は国民をたぶらかそうとしているのだろうか。どうも安倍政権になってから一層国のやることが信用できなくなった。