昨今日本の失業率は大体4%前後を推移して比較的安定した労働市場にある。アメリカとドイツが6%、フランスは10%、イタリアに至っては13%台で街に失業者が溢れている現状である。その点では、日本は韓国の3%に次いで、世界でも安定した労働市場を確保していると言える。だが、その実態は一皮剥けば化けの皮が剥がれるように盤石なものではない。
最も特徴的なことは、日本の労働市場は非正規雇用という不安定な雇用に支えられた労働市場から成り立っていることである。雇用されているとは言え、不本意ながらパート、アルバイト職に従事せざるを得ない人が多いのである。
実際厚労省統計に依れば、一昨年の非正規雇用者は年齢を問わず、全雇用者のうち平均で36.7%である。労働者のうち約1/3が非正規雇用者ということになる。その一方で労働者の絶対数が不足している分野もある。その筆頭が建設業界である。建設業界では現在作業員の人手不足が大分深刻になっている。2020年東京オリンピック景気に煽られて大手建設会社は工事量が増大し、作業員の不足がはっきりしている。建設業界は報奨金を出すことまでして作業員確保に努めている。他にも関連産業としてトラック業界でもトラックの運転手が枯渇している。これは従来では考えられなかったネット通販の急速な普及により、荷物の配達量が急増し、トラックとトラック運転手が不足した結果である。コンビニやスーパーでは、その対策として輸送手段をトラックから鉄道貨物輸送や船舶輸送に切り替えることまで検討している。
以前に比べ産業構造が多彩・多面的になり、新たに意外な業種も現われる反面、次第に消えて行く仕事も目に付く。農業の衰退と同時に農家にとって相談窓口になっていた農協が、昔の力を失い、農業の近代化、並びに発展にブレーキをかけている現状に、地方創生を唱える政府は農協のトップ機構、全国農業協同組合中央会(JA全中)の解体を決めた。
これにより政府とJA全中の対立が一気にエスカレートし、はしなくも思わぬ形で直近の佐賀県知事選挙においても表面化した。自民党・公明党が推す候補者に対して、自民党の一部が叛旗を翻し従来の農協支援層と農業団体が別人を候補者に立てて争った結果、劣勢だった反自民派が勝利を収めたのである。政府は農協改革案を次の国会に提案し、現在の農協を改革しようとしている。このところ地方では、政府が地方と対立した選挙結果はほとんど政府側の負けとなっている。国が住民に内容を説明し、納得させず賛意を得ていないからであろう。最近の安倍政権のやり方は、ほとんどこんなパターンである。これだから困る。この先政府のやり方がごり押しで進められるようなら、安倍政権も長期政権とはならないのではないだろうか。