昨夜遅く「イスラム国」に囚われていた日本人人質のひとり、湯川遥菜さんの殺害された写真を抱えたもうひとりの人質、後藤健二さんの写真がインターネット上に投稿された。情け容赦のない「イスラム国」の残虐な行為に関して、今朝早くから新聞、テレビとも日本政府の批判的なコメントを含めて大騒ぎである。後藤健二さんは今のところ無事のようだが、湯川さんが殺された写真を自らの手で持った画像が公開されたほどであるから、その心中は察するに余りある。
よく分からない「イスラム国」の実態が、どこに本部があるかも分からず、交渉窓口とのチャンネルが依然としてはっきりしないことが事態の解決を一層難しくしている。日本政府としては、今一番情報を持っていると思われるヨルダンとトルコを頼りに情報収集に当たっている。
実は、後藤さんの解放条件として「イスラム国」は身代金要求を取り下げ、ヨルダンに収監されている女性死刑囚の解放を求めてきた。この死刑囚は10年前にアンマン市内のホテル爆破事件で50人以上の死者を出した自爆犯人グループのひとりである。その死刑囚はヨルダンにとっては交渉上の切り札でもある。
ヨルダンにとって死刑囚を解放することによって、後藤さんを自由の身にすることはできる。だが、こういう複雑な事情もある。昨年「イスラム国」空爆に参加していたヨルダン空軍機が撃墜されパイロットが「イスラム国」の捕虜となった。このことは「イスラム国」にとっても、ヨルダン人パイロットは大きな切り札でもある。いくら親日的なヨルダン人だとしてもその心情としては、日本人の解放のために、その取引条件としてどうして多数のヨルダン人を殺害した死刑囚を自由にしなければいけないのか、納得できまい。ヨルダン人パイロットの身の上は解放されないまま、一体どうなるのか。巷に日本人とヨルダン人パイロットの解放を条件に、死刑囚を解放するなら良いとの意見もあるようだ。
いずれにせよ当面日本政府としては難しい立場に立たされている。
さて、一昨日史上最多の33回目の優勝を決めた横綱白鵬が有終の美を飾った大相撲初場所千秋楽で少々気になるでき事が2つあった。
ひとつは残り3番を前に三役揃い踏みを務める力士が、控えるべき時間に東方に控え席にいなかった。西方3人に対して控え席は東方1人だった。土俵上では三役前の取り組みが始まっていた。その取り組み中に控え席に横綱白鵬と同じく横綱白馬富士がそっと入って来る珍事である。どうも優勝が決まって気が弛んでいる。協会も白鵬だろうと厳しく注意すべきである。
もう一つは、優勝力士白鵬の表彰式中に、館内の観客が立ち上がり、ぞろぞろ帰って行ったことである。砂被り席周辺はかなり空いていた。いくら何でもこれでは、表彰する人、される力士に失礼であろう。礼儀を重んじる大相撲がこれでは台無しである。15日間連日満員御礼幕が下りたのは、東京では18年ぶりというのに場所運営では今場所は有終の美を飾ることができなかった。