2816.2015年1月28日(水) 後藤さんの運命は残り24時間

 昨晩「イスラム国」の人質になっている後藤健二さんが、オレンジ色の衣装を着て「イスラム国」に身柄拘束されているヨルダン人パイロットの写真を手に、ヨルダンの刑務所に収監されているリシャウィ死刑囚を解放しなければ、24時間以内に自分は殺害され、その前に写真のパイロットが処刑されると英語でアナウンスした。相手は時間を限定してきたのである。

 ヨルダン国内でも、パイロットの解放が最優先条件であると気勢をあげるデモが行われ、後藤さんが解放されるかどうかは、ヨルダン政府の決断ひとつに懸っている。しかし、いかに後藤さん解放の条件としてリシャウィ死刑囚釈放が求められたにしても、国民の間からはヨルダン人パイロットの解放を何よりも優先すべきであるとの声は、アブドラ国王やヨルダン政府にとって無視することができず、苦しい決断を迫られている。

 日本も死刑囚と後藤さんの交換を表だってヨルダンに要求するわけにも行かず、悩ましいところである。こういうケースは当事者にとって苦渋の選択になるが、直接関係のないアメリカ政府報道官は、しきりにテロに屈するような身代金や人質の解放は好ましくないと否定的なコメントを述べている。それでも最終決定はあくまで日本政府とヨルダン政府が決めることであると、嫌らしいプレッシャーをかけている。それでいて、アメリカはイラクで米軍人捕虜解放の交換取引を行ったが、その理由が軍人同士の交換だから筋が通るような屁理屈をつけている。結局は他国に対しては正論を語りながら、その一方で自らは姑息な手段を講じて論理性に欠けることを平気でやっているのだ。

 いずれにせよ今日中に24時間という刻限がやってくる。現地対策本部はアンマンの日本大使館内に設置され、リーダーである中山泰秀・外務副大臣は大使館を激しく出入りしている。その都度各国のジャーナリストが中山副大臣を取り囲んでコメントを聞き出そうとしている。中山副大臣もヨルダン政府の立場を慮ってか歯切れが些か良くない。

 ヨルダン、特に首都アンマンの光景がテレビにしばしば映し出されるが、2年半前に訪れた時の様子の通り、アラブの街らしく建ち並ぶ建物、民族衣装を着て歩く人々の姿、道路に沿った屋台の物売りが懐かしい。これからヨルダンにどんな結果が示されることだろうか。また、後藤氏の運命はどうなるだろうか。

 さて、ヨルダンに世界の注目が集まっているが、周辺のアラブ諸国のひとつでまた残虐なテロ事件が起きた。昨日リビアの首都トリポリでイスラム系武装集団がホテルを襲撃し8人が死亡した。彼らも「イスラム国」に忠誠を誓っている。

 こんな極悪非道な事件の渦中にあるアラブであるが、今夕の日経紙に依れば、昨年世界の国際空港で並みいる欧米の空港を尻目に国際線旅客数トップになったのが、何とアラブ首長国連邦のドバイ国際空港である。長らく首位の座にあったロンドン・ヒースロー空港を追い抜き、産油国の空港がトップを占めたというのも時勢を反映して、実に象徴的である。良きにつけ、悪しきにつけ、アラブが世界の耳目を集める時代になったということだろうか。

 それにしても風前の灯となった後藤さんの運命が心配である。何とか救われるようひたすら祈るしかない。

2015年1月28日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : mr-kondoh.com