このところ「イスラム国」の独善的で残虐な行為に対して、犠牲者を生んだヨルダンを主に中東地域では、「イスラム国」への反感と憎悪が高まっている。わが国でもこのところ国会では、日本人人質の救出に関連して、仮に日本人が捕らえられた場合の救出について、当然のように自衛隊の派遣に積極的な意見が公に表に出る有様である。安倍首相の唱える積極的平和主義が嵩じると、結局理由はどうあろうと、「平和のため」という言葉を都合良く使って自衛隊の海外派遣へ突き進んでいくことになる。
気をつけなければいけないのは、こういう火事場騒ぎに目を奪われている間に、政府自民党が憲法改正へ向けた動きを密かに進めつつあることである。憲法改正のためには、最大のハードルである国民投票で過半数を得なければならない。自民党はこれを何とかクリアするため策略を巡らせていたが、ここ数日で唐突に国民投票について具体的に検討を始めていることが公になった。今朝の朝日及び日経紙に安倍首相と船田元・自民党憲法改正推進本部長が「国民投票、参院選後に」とすでに国民投票が決まったかのようなニュアンスの記事が掲載されているではないか。現在衆議院では与党が2/3を獲得しているが、参院ではまだ2/3以上の議席を得ていない。そこで、来年夏の参院選で2/3を獲得した後に国会で憲法改正の発議を行い、国民投票で1/2以上の賛成を得て憲法を改正しようと企んでいるのである。しかし、国民投票の具体的な決まりがなく、どういう形で実施するのか現時点では不明である。
それにしても自民党内では、前記のようにすでに改正へ向けた準備がかなり進んでいるようで、この点では連立与党を組む公明党とはかなり考え方にずれがあるようだ。
また、改正は憲法の全文について行おうとするのか、部分的に実施しようと考えているのか、分からない。ただ、すべてを改正しようとするには抵抗があるので、現段階ではテーマを絞って一つひとつクリアしていこうと考えているようだ。例えば、環境権、緊急事態などが考えられている。
だが、憲法改正に異を唱える国民のひとりとして言わせてもらえば、改正を推進しようとするなら、こっそり姑息にことを進めるのではなく、せめて万機公論に決して欲しい。早めに広く、深く議論を重ねて国民が賛否を決める材料をできるだけ提供すべきである。