4307.2019年2月26日(火) 二・二六事件をなぜ回顧、報道しないのか。

 今から83年前の昭和11年の今日、雪の降る中で日本中を騒がせた歴史的大事件が発生した。言わずと知れた二・二六事件である。私にとっては誕生2年前のことであり知る由もないが、その後軍部に支えられてこの危機的な日を乗り越えた日本政府は、対中戦争を加速させその勢いで太平洋戦争に突入し、戦争にのめり込んで行った。このクーデター未遂事件を承知のうえかどうか分からないが、奇しくも今日皇居では天皇在位30周年に際し天皇が国民に感謝する催しとして、昨日に続き、午前と午後の2回に亘り各界の著名人を招いて茶会が開催された。

 気になるのは、近年この大事件に関する報道をメディアがまったく行わなくなったことである。二・二六事件は、満州事変以来軍部の影響力が強まっていたその当時、雪の降る中を陸軍青年将校らが下士官兵約1,500名を率いて起こした日本史上例を見ない空前のクーデター未遂事件であり、政府高官の高橋是清大蔵大臣、斎藤実内務大臣、渡辺錠太郎教育総監、総理大臣私設秘書官ら4名が殺害され、当時数日間に亘り首都東京が機能不全に陥った大事件だった。

 松本清張著「昭和史の発掘」に事件の詳細が細かく描写されていて極めて興味深いが、その中で事件の関係者のひとりが、私がまだ若かったころ10年近く住んでいた横浜市内のマンションの同じフロアにひっそり住まわれていると知って驚いたことを思い出す。

 いずれにせよ二・二六事件は、日本史上現実にあった衝撃的な歴史の一コマである。いつのころからか、まったくメディアで伝えなくなったのは何故だろうか。昭和は遠くなりにけりということだろうか。軍部が力を持出すと国を亡ぼすとの格言を思い出すことから、近年の自衛隊強化が先行き国家を危険に晒すという懸念が生まれることを憂慮した政府を忖度してメディアが「報道の自由」の権利を放棄したのでなければ幸いである。

 今日の朝日朝刊に、一昨日永眠された日本文学研究者ドナルド・キーンさんを悼む社説が掲載されている。その中にキーンさんはバブル崩壊後の日本社会のありように辛口だったとある。内向き志向、他人への配慮を欠いた振る舞い、本に親しんできた日本人がテレビやゲームに興じて古典と向き合う時間をなくしたことを心配していた。ファストフードから得る喜びは限りがあると指摘して、人間性の探求に駆り立てる文学が必要とされる可能性も述べていた。私には昔の大事な歴史的事実である二・二六事件を、しっかり見つめる必要性をアピールしているように受け取れた。二・二六事件を排除しようという今のメディアの在り方は、キーンさんからあまり好意的に受け取ってもらえないのではないかと思う。

 結局83年前に二・二六事件が起きた今日の新聞、テレビには二・二六事件に関するコメントはまったく見られなかった。

2019年2月26日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : mr-kondoh.com