4130.2018年9月3日(月) 「天声人語」筆者の浅慮と知識不足

 今朝の朝日「天声人語」を読んでその好い加減な内容に呆れるとともに、筆者の無知を情けなく思った。今問題になっている「ロヒンギャ難民」に関する内容である。数日前に国連人権理事会が、ロヒンギャ難民に対する組織的な迫害が行われていたとしてミヤンマー軍を非難した。同時にこの残虐行為を止められなかったとしてアウンサンスーチー国家顧問の無力ぶりも批判した。この行為が事実であるなら、ミヤンマー軍が非難されても止むを得ない。しかし、ロヒンギャ問題の根源はイギリスの支配にあった。戦前バングラディッシュとミヤンマーを植民地として支配していたイギリスが、イスラム系ロヒンギャ族を旧インド領(現バングラディッシュ)から、旧ビルマ領(現ミヤンマー)山中へ強制的に移住させた。これが問題の原点である。今更ミヤンマーを非難しても、当時のビルマはイギリスの言いなりだったので、多くの異民族を自国領内に定住させられたところで、貧しいミヤンマーとしては彼らの生活まではとても手が回らない。その原因を作ったのはイギリスなのである。

 最大の加害者であるイギリスが無責任にも今以て知らん顔をしている。国連にも責任はあると思う。この事実を承知している筈なのに、イギリスの責任を追及することはせず、被害者とも言えるバングラディッシュとミヤンマーを一方的に非難するばかりである。

 国連がまず為すべきことは、今日の問題を引き起こした原因をきちんと整理し明らかにすることである。イギリスが大きく関わってきたことは明確であるので、第一義的にイギリスの責任を厳しく追及し、それなりの責任を取らせることではないか。貧しいバングラディッシュとミヤンマーだけにいつまでも責任を負わせるようなことだけは避けるべきである。地球上の四分の一の土地を植民地として、現地人をこき使いアブク銭を手にして優雅な生活を送って覇権国家として君臨してきたのが、戦前までのイギリスである。まず、国連が中心になってイギリスにかかる費用の全面的な援助を行わせ、同時に国連加盟国に対して国力に応じてそれなりの支援策を講じて、経済的に立ち遅れているバングラディッシュとミヤンマーを支援するべきではないか。

 この「天声人語」氏の意見があまりにも見識を欠いていると思い、すぐに知人の朝日記者にメールでこの点を指摘し、問題点を伝えたところ、1時間も経たない間に返信が届いた。彼も私が指摘したイギリスの関与について何も触れていない点が気になっていたと書いてあった。

 それにしてもどうしてジャーナリストは問題の本質を欠くような視点で原稿を書くのだろうか。同じ朝日30日付5段記事の「ロヒンギャ難民 遠い安住」もバングラディッシュの南東部コックスバザールで取材されたもので、ミヤンマー側の視点はない。イギリスに関する描写はまったくない。調査、研究不足としか言いようがない有様である。これだからメディアを全面的に信用することが出来ない。

2018年9月3日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : mr-kondoh.com