昨日アメリカ大リーグのカリフォルニア・エンジェルスの大谷翔平選手が本拠地アナハイムで、投打二刀流のバッター部門で2試合連続ホームランを放ち、日本国内のみならずアメリカでもニュースとして大きく取り上げられ話題となっている。投打二刀流選手はちょうど100年前に活躍したベーブ・ルース以来と騒がれている。日本の野球選手が好意的に評価され紹介されるのは嬉しいことであるが、アメリカのメディアに気が許せないのは日本出身の野球選手を持ち上げた途端、その一方で‘The New York Times’や、‘The Washington Post’が「男女差が国際比較で低いランクにある日本が、どう見られているのかを象徴している」と手厳しいコメントをしたことである。偶々日本の相撲界に蔓延している男女差別感について皮肉っぽく報道したのである。
アメリカ紙が攻撃したその矛先は何かと言えば、昨日姫路市内で行われた大相撲春巡業中の出来事である。土俵上で挨拶していた姫路市長が突然くも膜下出血でそのまま土俵上に倒れた。慌てて観衆の中から女性が土俵に上がり市長の応急手当を行ったことに対して、「女性は土俵から下りてください」と場内の行司アナウンサーが放送したことについて書かれたものである。国内でも今日のエンタメ番組で事細かに紹介されていたが、他にも1人、そして更に2人の女性が土俵に上がった。彼女らは看護師で咄嗟に救急処置が必要と判断してそれなりの行動を起こしたのだが、土俵を神聖な場所と考える日本相撲協会はこの行為を潔しとせず、件の内容のアナウンスになった。伝統が大事なのか、人の生命が大事なのか、との批判的な声が上がっている中で、八角日本相撲協会理事長がアナウンスは不適切だったと謝罪した。
日本相撲協会はこれまでも女性が土俵へ上がることに後ろ向きだった。姫路市に続いて今日行われた宝塚市内の巡業でも、中川智子市長が土俵上からの挨拶を希望したが、日本相撲協会から伝統を考慮して欲しいと認められず土俵下で行った。中川市長は悔しいと不満をぶちまけていた。かつて時の官房長官・森山真弓氏も総理大臣杯を手渡すために土俵に上がることを断られ、その後は2000年の大阪春場所で太田房江知事がやはり土俵へ上がることを拒絶されている。頑なな相撲協会は、1978年には「わんぱく相撲」で決勝へ進んだ小学5年生の少女でさえ、東京場所決勝戦で国技館土俵上に上がることを許さず、少女は不戦敗で準優勝となったこともある。
神事は神事、土俵上は女人禁制としても、生命に関わるような事態に際して、それに臨機応変に対応する気持ちがどうして示せないのか。今回は幸いにしてすぐ救急隊がかけつけ倒れた市長を病院に担ぎ込んで一命を取り止めたようだが、対応が遅れれば生命に関わるような事態だった。
とかく昨今の日本相撲協会の評判は芳しくないが、一度想定されるケースを洗いざらいチェックして対応を考えてみることが必要ではないかと思っている。
このままでは相撲が世界へ進出し、女子相撲も行われる現代において風習、習慣、ルールなどが現代社会に適応しているのかどうかチェックして、世界的に嘲笑されないよう配慮すべきではないか。