近年街の多くの書店が閉鎖に追い込まれ、新聞や書籍が読まれなくなった。その原因のひとつは、学生が読書をしなくなったことが大きい。全国大学生協連合会によると近年大学生が本を読まなくなり、彼らの読書量も大分落ち込んでいるらしい。驚ろいたことに、大学生でありながらその半数以上が読書をしないというのだからお話しにならない。2時間以上読書に時間を費やす学生は、僅か5%程度だというからこれも酷いものである。学生でありながら本を読まない。彼らは一体何のために大学へ行くのだろうか。これでは高い学資を払って大学に進学する意味も必要もない。彼らには大学で勉強する目的が分かっていないのではないか。大学生にとって本を読むことは学問の基本ではないだろうか。専門書であろうとなかろうと本を読まなければ先へ進まない。本を通して知識を得て、思考力を養うものだと考えている。
本を読まない人間は信用出来ないと言った財界人がいる。特に専門書がそうだが、その他の文芸書も思考力と想像力、構想力を育てるうえで社会生活を送るうえに欠かすことが出来ない。恐らく本を読まなくなった大きな原因は、スマホに時間を注ぎ込み、知識ならそこから吸収できると安易に考えているからだろう。スマホ集中の反面読書へかける時間は当然少なくなる。困ったことに、そのため彼らには文章を書く時間も少なくなり、手紙も書かなくなり、手紙やレポートを書くコツを身に付ける余裕もなくなり、まともなレポートが書けなくなる。社会に出てから困るだろう。
ちょっと寂しく感じている。
さて、昨秋ポーランドを訪れる前に新聞で、1980年代に一世を風靡した自主管理労組「連帯」委員長だったレフ・ワレサ氏に批判の声が挙がっていると知って意外な感がした。ポーランドでガイドに直接尋ねてみると確かにそういう声はあると承知していた。1980年に起きたベルリンの壁崩壊のさきがけとなったワレサ氏らのグダニスク造船所における行動が、東西対立を崩壊させた。その後ポーランドで大統領となり、ノーベル平和賞も受賞した英雄が、なぜそれほど評価が下がったのか、理解出来なかった。
先日テレビで港湾都市グダニスクを紹介した場面に登場したワレサ氏は、今の若い人たちは平和というものを分かっていないし、平和とは自分たちで作り出すものだと若者に注文をつけていた。かつてソ連からの大量受注に沸いた造船所は、今受注が落ち込み、労働者も最盛期の約2万1千人から、僅か1千人にまで大きく落ち込んだ。経済が停滞し、グダニスクの活気も衰えた。
そんなご時世に、現在の不景気をかつての「鉄の男」ワレサ氏の責任にされても困るだろう。ワレサ氏は「民主化を実現した後、連帯が権力を独占するのは避けるべきだ。複数政党制による民主主義を目指しているのだから」と語っている。一方で政権政党「法と正義」は、民主主義に不可欠な報道の自由や司法の独立への介入を強めている。経済成長の果実にありつけない国民の不満を吸収するため、内向きのナショナリズムを煽るような動きも顕在化している。ワレサ氏の理想は実現の途上にあったが、民主化後に襲った経済停滞により、元同士らは対立し内部分裂して今やかつて名前だけだった社会主義とは逆行して保守・右傾化へ向かって走り始めている。ポーランドへ行くまでは寡聞にして知らなかったが、ちょっと残念なストーリーである。