「社会主義国家」を唱える中国の習近平国家主席が、長期政権へ踏み出すべく憲法条文を改正する。現在の2期10年を反故にしようというのだ。元々毛沢東が社会主義国家を目指していた時代とは異なり、今日中国が社会主義を理想として実践しようとしているとは到底思えない。社会主義国家どころか、資本主義を超越して帝国主義国家ではないかと思うくらいである。どうして中国が非現実的な「社会主義国家」という名称に拘るのか分からないが、私なりにこう考えている。
資本主義国家の抑圧から脱出しようと毛沢東らが中国共産党を起ち上げ国民党を破り、資本主義体制を打倒し革命を成就させた歴史の教えから、現代中国の礎を作った先人の功績を称え、共産党主導による社会主義国家の発展を信じた後継者らが、毛主席こそが新中国建設の創建者と考え、毛主席らと別の路線を歩むこと、つまり社会主義国家以外の国家を唱えることは自らを破滅へ追い込むとの考えがあるのではないかと考えている。
胡錦濤・前国家主席、及び江沢民・前々国家主席はいずれも憲法に基づき、2期10年を全うしてその地位を去った。然るに習近平・現国家主席は、昨年秋の中国共産党大会で後継者を指名せず、自らの任期を無限に延長しようとして、そのまま居座ることを示唆している。
毛沢東はあまりにも長期政権だったことが、文化革命などの混乱を引き起こしたとの教訓がある。仮に権力絶大となった習近平氏が仮に道を間違えた場合、素早く次の手を打つことが出来るだろうか。現状は習近平氏の独裁的権限が強まるばかりである。失脚した他国の独裁者らと同じ哀れな末路を辿ることにならないだろうか。
偶々来月ロシアで大統領選が行われる。似て非なるものとは言え、プーチン大統領と習近平国家主席の目指すところはどうも同じようだ。プーチンも自らの強大な権力を長期的に保持するため、憲法を改正した。任期は2期8年だったが、一旦野に下り、傀儡のメドベージェフ大統領の下で離職したうえで、憲法を改正して再選され期間も延長し2期12年の長期政権を可能にした。プーチン大統領は、2度目の任期で、3月には2期目の大統領選に臨む。圧倒的な勝利が安定政権への最大の支援である。
プーチン氏のクリミア半島併合を厳しく批判した野党指導者ネムツォフ氏が、3年前に暗殺された。ネムツォフ氏は元エリツィン大統領の下で第一副首相を務めていた人物で、プーチン批判を繰り返していた。プーチン氏はライバルを追放、抹殺することによって長期政権を担い、自らの権限を強めて独裁政権の基盤を構築しようとしている。
わが国でもスケールは小さいが、これを真似しようと考えている政治家がいる。一強多弱に胡坐をかき、最近綻びが見えて来た安倍晋三首相である。自民党は現在2期6年の総裁任期を3期9年に延長して、現在の安倍政権をこのまま長期政権にしようと企んでいる。安倍首相も自己顕示欲の強いプーチンや習近平と考えることは基本的には同じである。
図らずも、メディアではまったく伝えないが、今日は昭和時代の闇が深まって軍部の力が強まった「2.26事件」発生の日である。3人の行動は何やら暗示的である。