ちょうど半世紀前の今日、1968年1月11日、エチオピアの首都アジスアベバからジブチと呼ばれていた仏領アファル・イッサ(現ジブチ共和国)経由でアデンへ入った。日本出発前には駐日イギリス大使館からアデンのビザを取得していたが、この日対イギリス独立闘争と2つの民族解放戦線同士による内戦も漸く終了して、新国家「南アラビア連邦人民共和国」としてイギリスから独立する記念となる1日だった。ところが、その40日前の11月30日突如アデンは独立宣言を行った。独立について何も知らないままアデンへ入国した1月11日は、すでに新国家となっていた。当時は搭乗日前に航空会社に座席のRECONFIRMをしないと搭乗出来ない恐れもあったので、この難しい環境下でもあり、直接係員から実情を知りたく前日アジスアベバのAIR JIBOUTTI支店へ出向いた。そこでアデンの独立を初めて知った。係員の説明では、私が取得したイギリス政府発行の入国ビザでは入国出来るかどうかは保証出来ないと言われた。ただ、フライト搭乗は可能であるというので、ここまできたらイチかバチかでアデンへ行くより選択肢はないと覚悟を決めてフライトの確認を取り付けた。
ジブチも灼熱砂漠の中の都市で、蒸し暑かったが面白そうなところだなぁというのが率直な感想である。小さなプロペラ機で紅海上空を飛行してアデンへ着いた時、ヨシズ張りの建物の入管で恐れていたことが現実となった。このビザはわが国のビザではないので入国出来ないと言われたのである。これからどうすべきか、はたと考えこんでしまった。しかし、自分で解決する以外にない。入管事務所前を行ったり来たりしている間に、私の動作が目についたのか、ひとりの入管係員が近づいて来て何をしたいのだと聞かれたので、入国出来ず困っていると打ち明けたところ、もう戦争は終わったので、アデンではなくわが新独立国家南アラビアのビザを取得すれば良いではないかとごく当然のアドバイスだった。そこで直ちに新国家のビザを申告し、新規発給のビザで入国することが出来た。何と日本人として初めての南アラビア共和国への入国者となったのである。
思えば、今日はその当時海外武者修行中だった私にとっては記念すべき1日だったのである。アデン市内まで税関職員のお世話で小型トラックの荷台に乗せてもらい涼しい風を浴びながら、これも斡旋してもらったホテルへ辿り着いた。あれから早や半世紀が経った。感慨を憶えずにはいられない。
さて、今朝の新聞を見て驚いた。昨日小泉純一郎、細川護熙両元首相らが国会内で記者会見を開き、国内すべての原発を直ちに停止する「原発ゼロ・自然エネルギー基本法案」を発表したばかりだったからである。法案は原発を即時に停止し、再稼働や新増設を禁止することや、2050年までに電力を再生可能エネルギーで賄うことが柱である。2人の元首相が実行しようとすることは、筋が通り分かり易い。日本にとって原発は必要ではないということを分かり易く説明している。
そんな時に新聞一面に日本政府がイギリスの原発2基の総事業費用約3兆円に対して、日立が請け負う事業に政府保証をつけるなどして2.2兆円も融資しようという大盤振る舞いの話である。他国の原発建設にそれほどの資金援助をする必要があるのだろうか。
日本国内の原発環境が否定的になっている中で、日本市場に今後あまり期待が出来ず、海外の原発事業に目を向けたものと言える。アメリカで東芝の原発事業が失敗した二の舞を日立も演じかねない。そうなった場合国民にそのしわ寄せが押し寄せる。国家財政から巨額の資金を捻出するのではないにせよ、借入金の担保保証をすることは、事業が失敗すれば国の大借金になる。国民にはそれを納得出来るように説明して欲しい。この辺りは政府としてきちんと国民に説明する義務があるのではないだろうか。1強に浮かれて何にでも手を出す安倍政権の行動をメディアももっと丁寧に伝えるべきではないだろうか。