12年前発足時に誘われて会員となった「NPO法人・江戸城天守を再建する会」が、あまり積極的に参加しない間に内部で抜き差しならぬもめ事があったことを知った。我々通常会員が知らない間にNPOから分離した新しい別の財団が発足していたのである。NPO事務所の近くに「一般財団法人・江戸城天守再建・歴史文化街づくりルネッサンスの会」という長たらしい名前の新組織が設立されたのである。そして同じような活動を始めたようだ。どうもその間の経緯がはっきり分からなかったので、一度手紙を出して返事をいただいたが、依然として実態がはっきり分からず、そのまま放置しておいた。
すると昨年末になって後者の財団からNPOとの現段階における関係について、隙間風が吹いているような関係を匂わせる説明書を送ってきた。はっきり言えば、双方の理事同士間の考え方の違いと、旧体制が的確に事業を進めなかったことから計画が遅れたとの批判があったようで、お互いを非難し合っているように受け取れた。私をNPOに誘ってくれた理事長は新たな財団の代表理事になった。
当NPO会員になったのは、偶々父方曾祖父が徳川幕府の御家人だった事情もあり、入会を誘われたタイミングで会員になった。だが、最も好ましくない内部の対立により、ヴィジョンが具体化する前に組織が割れ袂を分かったということに失望している。不明朗な組織に愕然として、このまま首を突っ込んでいるのも不本意なので、いずれこの組織から脱会しようかと考えているところだ。
当初このNPOには、先は読めないが天守閣再建という大きな夢と希望があった。全国各地のお城が再建されたり、お色直しをしたり、お城は観光地の目玉として脚光を浴びている。これまではオリジナルな建築様式を無視して数多くのコンクリート製のお城が作られたが、最近ではオリジナル通りに木材建築の昔の姿を残すことが考えられるようになった。この江戸城再建計画は最初から木材を使って建築する基本計画があり、その図面も残っていた。最大の難問は天守閣の土台が皇居内にあり、宮内庁の許可を得るのが難しいとの不安である。しかし、再建されれば東京の大きな観光スポットになり、外国人観光客を呼び寄せる大きな観光資源とも考えられ、政治家を動員して国民運動を起こせば不可能ではないとの考えがあった。それが計画も固まらないうちに些細なことで挫折してしまう恐れが生じてしまった。会員であるかないかは別にしても、こういう史実に基づいた建物を再建することは重要なことであると思う。会員でなくなるにせよ、このまま計画が進み、新しい江戸城が再建されることを願って止まない。武士だった曾祖父は天界でこの騒ぎをどう思っているだろうか。