休止していた原発が再稼働へ大きく舵を切る中で、今日広島高裁は四国電力伊方原発3号機の運転を禁じる仮処分を決定した。高裁の決定は、伊方原発から約130㎞離れた熊本県の阿蘇火山に活動の可能性があり、その場合伊方原発が影響を受ける恐れがあると判断されたことによるものらしい。阿蘇火山が仮処分を申し立てたのは、広島市と松山市の住民である。この3号機は現在再稼働中であるが、定期検査のため停止中だった。東日本大震災で東電福島第1原発事故から6年9カ月が経ち、ほとぼりが冷めたかのように最近では地元地裁が関西電力の高浜3号、4号機の運転差し止めを決定しながら、その後抗告審で取り消されている。どうしてこんな大事な決定をひっくり返すことが出来るのだろうか。各地の原発が順次再稼働の動きを見せていた。
こんな時であるが、この仮処分は直ぐにも法的拘束力を持つため、今後の司法手続きで覆らない限り、再稼働は出来ないことになる。
四国電力はこの仮処分決定に対して、承服出来ないとして異議申し立ての手続きをするという。
「のど元過ぎれば熱さを忘れる」と言われるように、国としてはエネルギー源として二酸化炭素が排出されず、(事故さえなければ)経済的な原子力発電を推進する政策を主導したいところだ。ところが、今や地球温暖化が世界的に大きな課題となり、同時に核開発が敬遠される中で現在需要を賄うことが出来る発電能力があるのに、事故の恐れのある危険な原発を必要とするのかとの根源的な論議が充分交わされていない。政府は危険を顧みず安易に原子力開発、原発再稼働に頼ろうとしている。現在の原発政策は、国家、国民にとってゆるがせに出来ない重要な問題であるのに、未だ国民的議論になっていないのである。これは、安倍政権の体質によるものではないだろうか。
時恰もパリで気候変動サミットが開かれた。55カ国の各国首脳の他に、日本からは河野外相、グテーレス国連事務総長らが出席しているが、パリ協定から離脱を宣言したアメリカのトランプ大統領は招かれていない。今世紀後半には世界の温室効果ガス排出の実質ゼロを目指しているが、サミットでいかなる有効的なアイディアが採択されるのか、注目したい。