師走も半ばになりこのところ寒い日が続く。当分この寒さが続くようだ。昨日セルビアのヴァイオリニスト豊嶋めぐみさんから頂いたメールによれば、現地では霙から雪に変わるという。
そんな寒い中で今日オスロではノーベル平和賞授賞式が行われた。平和賞以外の授賞式は、アルフレッド・ノーベルの生誕地スウェーデンのストックホルムで行われるが、平和賞だけはノーベル自身の意向によりオスロで行われ、今年は国際NGO「核兵器廃絶国際キャンペーン」(ICAN)が受賞の対象となった。
ICANは国連で圧倒的多数の賛成を得て成立した核兵器禁止条約を結実させることに貢献したことが高く評価され受賞することになった。ところが、被爆国である日本政府はこの条約に冷たい対応を取り、原爆被爆者ら関係者から非難の声が聞かれている。一歩譲って、核兵器を所有する国と所有せず廃棄を求める国との間に隔たりがあることは理解出来ないこともない。しかし、核兵器を無くしたいという国際世論を考えれば、唯一の被爆国である日本が核兵器を禁止する条約に賛成しないということはどう考えても不合理で理解出来ないし、この条約に賛成した国々から不信感を持って見られて当然である。
一旦ことがこじれて世界戦争になれば、核兵器が使用されることは間違いない。これは人類の滅亡を意味している。現在核保有国が保有する核弾道の数は、1980年代に比べれば1/4近くに減少している。しかし、依然として現在世界9カ国の中ではロシアの7,000発を筆頭にアメリカ6,800発、フランス300、中国270、イギリス215、パキスタン130~140、インド120~130、イスラエル80、北朝鮮10~20発と推定されている。このうち1発でも使用されれば、反撃して拡大使用され破滅への道を辿ることは明白である。恐ろしい人間抹殺兵器である。
どうして日本はこの核兵器禁止条約に賛成出来ないのかと言えば、同盟国である核保有国アメリカの核の傘の下にいるので、アメリカに盾突くことが出来ないからである。河野太郎外相は次のように言っている。①政府には国民の平和と安全を守らなければならないという責務がある。②アプローチは違っても核廃絶というゴールは共有している。③北朝鮮の核の脅威が現実となる中、日本は「非核三原則」を堅持しているので、核抑止はアメリカに頼るしかない。外相のコメントは詭弁に過ぎない。問題の本質から逃げているとしか思えない。外務大臣が国家、国民のことを考えていないと言っても好い。かつては自民党内でも比較的リベラル派と見られていた河野外相も、大臣の椅子が近づくに連れて保守化傾向を強めている。その挙句がこのコメントである。
これに対して平和賞授賞式で被爆者の日系カナダ人サーロー節子氏は、授賞式前に、核兵器禁止条約について日本や、アメリカ、カナダ政府などは見下した態度を取っていると手厳しい。特に母国日本に対しては、日本政府が国連に核兵器廃絶決議案を提出しているが、言葉だけではないか、ふりをしているだけだと強く批判していた。そして今日の授賞式では被爆体験から「がれきの中で聞いた言葉を今皆さんに繰り返します。『あきらめるな、押し続けろ、光の方にはっていくんだ』」と訴えた。
また、フィンICAN事務局長も「核兵器を終わらせるか、私たち人類が終わるかの選択をしなければならない」と述べ、すべての国が核兵器禁止条約に参加すべきだと訴えた。
彼らの日本政府への厳しい言葉を政府、河野外相はどう受け止めるのだろうか。
サーロー氏はこうも言っている。「日本政府が核保有国との橋渡しをするなら、自分たちに反対している相手の問題がどこにあるかを知る必要がある。ICANと語り合わず、核兵器禁止条約の交渉会議にも出席せず、なんで橋渡しができますか」と。