今から37年前の今日ビートルズのジョン・レノンが暗殺された。ビッグニュースだった。偶々その時旧文部省の教員海外派遣団にお供してフランスのマルセイユに滞在していた。テレビで事件を知り驚いたが、現地では号外が出てホテルのボーイさんまで噂話をしていた。実はその前日の7日、明日は太平洋戦争開戦記念日になると先生方と話し合っていたところだった。翌年以降ニューヨークを訪れる度に暗殺現場でもあり、ジョンとオノ・ヨーコが住んでいたダコタハウスの前を通る都度ビートルズのことを想ったものだった。
そして戦争に因縁めく開戦記念日の今日は、アメリカのトランプ大統領の愚かでノーテンキな発言が世界中を揺るがせている。「エルサレムをイスラエルの首都と正式に認める」と突然宣言し、同時に現在首都テルアビブにあるアメリカ大使館をエルサレムに移転するよう国務省に指示したとの発言である。エルサレムの扱いは、当事国であるイスラエル政府とパレスチナ自治区政府との間の和平交渉の場で決めるとの約束だったし、国連もそう確約している。それを部外者であるアメリカが無視し、僭越にも他国の首都を決めようというのだから、あまりにも無謀で不遜であると言わざるを得ない。案の定世界中からアメリカに対して非難の声が挙がっている。我が意を得たりというのは、当事国のイスラエル一国のみである。同盟国のイギリス、フランス、ドイツの他に、ロシアや中國、当然ながらイスラム諸国から厳しい非難が浴びせられている。国連のグテーレス事務総長もイスラエルとパレスチナの和平の可能性を危うくし、この一方的な措置に対して強く反対している。
アメリカ議会はこれまでクリントン大統領時代の1995年、エルサレムの首都承認と大使館移転を法制化した。ところが、歴代大統領は緊迫した状況を考えその実施を延期してきた。大統領の取り巻きも一様に慎重だった。それにも拘わらずトランプ大統領は強引にパンドラの箱をこじ開けてしまったのである。トランプ大統領は今のままでは事態は解決出来ないので、イスラエルとパレスチナ間の争いに新しいアプローチを始めると得意げだったという。現状把握がまるで出来ていない。
気になるのは、日本政府の対応である。世界中が猛烈に非難しているこの首都移転という失態に対して、アメリカとの緊密な同盟関係の故にアメリカ政府に対してはっきり‘NO’と言えず、忠告や、再考を促すようなこともなく、ひたすらあいまいなまま日本の立場を表明していない。アメリカの出過ぎた行動に忖度して、まったく動こうとはしないのだ。
過日も国連で採否を問われた核兵器禁止条約が圧倒的多数で承認された中で核所有国は悉く反対した。これに対して被爆国である日本はアメリカの核の傘の下にいる立場から棄権を選択して、条約賛成国から厳しい対応を迫られている有様である。これもアメリカに対する忖度が過ぎることが原因である。
また、在日米軍基地における様々の不祥事の対応についても言える。対応を自治体に任せてアメリカ政府に対して国としてきちんと改善を申し入れることをしない。これでは国としての責務を回避してはいることにならないだろうか。いつか長崎原爆被爆者代表が安倍首相に対して面と向かってあなたはどこの国の首相ですか、と詰ったことでも推し量れる。現状は、情けないことに日本はアメリカに対して何も言えないロジックに嵌まっているということである。果たしてこれで日本は主権国家と呼べるのだろうか。
トランプ大統領とアメリカも酷いが、日本の行動だって無責任で恥ずかしい。