役人がまたロクでもないことを考えている。一度話題になったが、いつの間にやら消えて安心していた「出国税」という新税設置を観光庁がまたぞろ持ち出してきた。日本からの出国者は、日本人や外国人に拘わらず一律に千円を課税しようというのである。何の根拠もない単なる思い付きだけで、有識者会議が急増する訪日客をさらに呼び込むための観光振興策に充てるとの言い分である。「日本のプロモーション強化や出入国手続きの円滑化」のためという抽象的な理由をつけ、取りやすいところから取るというずる賢い発想が垣間見える。これまでなかった、いわゆる新税を設置しようというのだから国民に納得の行くように論議を尽くし、国会で充分審議して国民にも分かり易く説明して法律改正によって徴税するというのなら理解も出来るが、あまりにも一方的なやらずぶったくり手法で召し上げるというのは、民主国家にあっていかがなものかと思う。
しかも、この新税については首相官邸筋から声があったようで、このところ1強の安倍政権の傲慢なやり方は些か常軌を逸している。この他にも教育無償化を柱とした2兆円規模の支出のうち、3千億円を経団連榊原会長に拠出をお願いした件で、意思決定の在り方がおかしいと小泉進次郎自民党筆頭副幹事長が政権批判を行っていた。どうも物事の決定に対する安易な姿勢が心配である。観光庁の特定財源になって民間企業の流動資産のような使い方をされたのでは、国民は堪ったものではない。
ともかく国税を決めるのに、先に結論ありきのまま非公開の有識者会議で2カ月そこらの短期間に決めてしまうのは、あまりにも拙速である。
2016年の出国者数が約4千万人で、ひとり当たり千円徴収すれば約4百億円の財源になると観光庁が決めたとするなら不届き千万である。こういう安直な姿勢では、今後も簡単に再値上げや、他の官庁でも新たな課税を真似する動きが出ないとも限らない。どうも役人が勝手に仕切って官邸に忖度しているように思えて仕方がない。
大体「日本のプロモーション強化や出入国手続きの円滑化」に協力するなんて文言で、千円も払おうという気持ちになる出国者がどれほどいるだろうか。メディアも派手な話題ばかり追わずにこういう「目くらまし」のような事件もどんどん追及して欲しいものである。