朝日新聞朝刊の「異議あり」欄に、中世史家の保立道久・東大名誉教授が日本史の時代区分についてその問題点を挙げ、新たに持論を提起している。これまで学んできた日本史の時代区分に新たな見方で異論を唱えて大変興味深いが、あまりにも唐突なお説に少々戸惑っている。
その大きな変更は、ヨーロッパ史や中国史と同様に時代を地名の表示から為政者の名に変えようという主旨で、まず王権により時代を区分するという。これまでの表示でとりわけ象徴的だった飛鳥、奈良、平安、鎌倉、室町、江戸などの懐古的な名前を大和、山城、北条、織豊、徳川に変えるということに驚いている。最も違和感のあるのは、文化的なイメージのある飛鳥、平安、安土桃山など詩的な名称をまったく無くしてしまうことである。数々の格調高い芸術を生んだ安土桃山時代は信長、秀吉が活躍した武闘的な織豊時代に変わる。平安時代については、784年に長岡(現長岡京)へ遷都して、その10年後の794年平安時代が始まったと言われているようだが、当時直ぐに再遷都して左京・右京を持つ平安京を作ろうとした。だが、右京に住む王族・貴族が激しい政争で没落し、右京は荒れ果てて平安京はなくなり、むしろ大津、宇治、大山崎を結んだ「山城京」を拠点として王権がスタートしたとする説を取った。これが山城時代と名付ける根拠だそうである。鎌倉時代についても征夷大将軍となった頼朝より、承久の変でクーデターを起こした後鳥羽上皇を追放し覇権を握った北条の方が実質的なリーダーだったという史実を採用したからであるという。従って北条時代の幕開けは、承久の変が起きた1221年を提起している。
これだけでは些か抵抗があるが、ひとつの提案として歴史学会辺りで議論して意思統一したうえで、文科省の承認の下で更に分かり易い解説をして欲しい。ともかく「エッ?」となり、目から鱗とでも言えるような新説でもある。
昨日駒沢大学公開講座で共同通信社の山田克講師が、外国及び国内通信社について何度目かの講義をされたが、いただいた古い朝日と信濃毎日新聞の記事コピー資料の中に世界史的な事件があり貴重なものだった。ひとつは、1914年7月に勃発した第1次世界大戦開戦速報である。「墺塞愈々開戦」と勇ましい見出しがある。2番目は第1次大戦終戦のニュースである。3番目は今年100年目を迎えた17年11月7日発生のロシアの10月革命成功の情報で「冬宮遂に降伏す」とか、「ケ首相姿を晦ます」とある。次いで31年9月18日勃発した柳条湖事件である。
今年はメディアでもロシア革命に関心があり、ちょうどボルシェビキがケレンスキー政権を倒した100年前の当日に当る一昨日、ロシア各地でロシア革命賛成と反対の集会やデモが行われていた。プーチン大統領は、12年前にロシアの祭日からこの建国記念日を削除したこともあり、革命に対して評価する態度は取らない。だが、厳然たる歴史上の事件として、またそれ以降旧ロシアが革命を下地に社会主義体制を維持してきただけに、その郷愁もあり革命を評価するロシア人は約6割もいるといわれる。18~24歳の若者は7割強が革命派である。プーチン大統領は、次の選挙で再選を狙い、憲法改正によって更に大統領の座に居座ろうと考えているようだ。それが余計に国民を革命派に向かわせている。
今日講座終了後桜新町の天麩羅店「花むら」で講師を囲み、会食による懇親会を行った。