ワルシャワからクラクフへの移動はバスではなく鉄道である。市内中心部の近代的なワルシャワ中央駅から座席指定の特急列車により2時間半ほどかけてこれも明るい斬新なビル、クラクフ駅に到着した。鉄道から見る景色も道路沿線と同じような並木が整った風景の連続である。ヨーロッパらしい絶景である。列車の走行に連れポーランドの農村地帯を飽かずに窓の外をぼんやり眺めていた。世界遺産都市・クラクフは幸いにも第2次世界大戦で、歴史的な遺跡が数多くあるとの理由で連合軍の攻撃対象から外された。中央市場広場周辺の狭い路地には、どことなく情緒が感じられる。
今日は市内観光では時間的な制約もあり、まず現在国立博物館で公開されているレオナルド・ダ・ヴィンチの「白テンを抱く貴婦人」一点だけを鑑賞した。これが果たしてダ・ヴィンチ作品であるかとの真偽論が飛び交った中で、最終的にはキャンバス上に彼の指紋が検出されたことが決定的になったという。ダ・ヴィンチには、他にも真偽が取り沙汰された作品がいくつかある。私自身これまで鑑賞したダ・ヴィンチ作品の中でもパリ・ルーヴル美術館の「モナリザ」、ミラノのサンタマリア・デッレ・グラツィエ教会の「最後の晩餐」がとりわけ印象に残っている。その後中央市場広場、聖マリア教会を見て、少し歩いてヴァヴェル城を見学した。
確かに古都らしい雰囲気の漂う市街である。だが、表面上それほど感じられないが、ポーランドは今政治的に大きな問題に直面している。かつてグダンスクで自主管理労組を結成して国内をまとめ、ノーベル平和賞まで受賞して、今は引退したワレサ元大統領への反感が浮上しているようだ。一方で、政界の最高実力者とされるカチンスキ「法と正義」党首が最高裁人事に介入しようとして、EUから制裁を課されようとしている。そのEU制裁を実行しようとしているのが、ポーランド元首相のトウスクEU大統領というのだから、何をか言わんやである。
ポーランド人ガイドにこの問題について聞いてみても、渋面で首を傾げるばかりだった。市街からはそんなきな臭い空気は感じられない。でもそこに住む人々にとっては、避けられない難しい問題なのだろう。
今回の旅行で最大の目的であるアウシュビッツ強制収容所、並びにビルケナウ収容所は明日見学する予定で、楽しみにしている。