国内外にあまりパッとしない事象が多いが、このところ密かに注目を集め不安視されているのが、ビルマ西部のバングラディッシュ国境に近いアラカン山中のラカイン州に住むイスラム系ロヒンギャ民族とビルマ治安部隊の衝突である。もう40年も昔毎年ビルマへ慰霊巡拝のツアーでお供していた当時から、このアラカン山脈にはビルマ人とは別の民族が住んでいることは仄聞していた。それでもこれまでビルマ国民はロヒンギャとは居住区分を分け、お互いに接触を避ける形であまり大きな争いになることはなかった。
それが、ここへ来てロヒンギャの武装集団が警察施設を攻撃したことに端を発し、ビルマ治安部隊が力づくの掃討作戦に出たことでロヒンギャの一般住民を巻き込むことになった。現在ラカイン州を中心に100万人ほどのロヒンギャが居住している。現在ビルマ政府は彼らをバングラディッシュからの不法移民と見做して、国籍を与えず、参政権や移動の自由も認めていない。
一番気になっているのは、民主化運動のリーダー格であり、国家顧問として事実上政権トップのアウンサンスーチー女史が、この問題ではまったく腰が引けていることだ。ロヒンギャへの弾圧に対して、同じイスラム教徒の多いマレーシアやインドネシアでは、抗議デモも起きている。国連も調停に介入しようとするが、スーチー氏が拒絶する有様である。民主化運動で軍部に激しく抵抗し軍事政権から解放し多くの国民から尊敬され、ノーベル平和賞まで授けられたスーチー女史が何ゆえ、このイスラム系ロヒンギャに対しては民主的な姿勢を示さず、後ろ向きなのか理解に苦しむ。多民族国家ビルマでは国民の約9割が仏教徒であるが、それが故にイスラム教徒の自由を迫害しているとも断定出来ない。下手をすると宗教間戦争にもなりかねない。
それにしても、これまでの経緯を考えてみると、このままロヒンギャ問題を放置しておくとスーチー氏のイメージダウンにつながる。民主化運動の象徴的存在だったスーチー氏に、何故ロヒンギャを受け入れようとしないのか、考えを伺いたいものである。
さて、3日北朝鮮が行った水爆実験の威力が、当初75キロ㌧と言われていたが、昨夕になって小野寺五典防衛相が120キロ㌧と訂正した。ところが、今朝小野寺防衛相は再び数字を訂正した。何と160キロ㌧と推察されると述べた。これは広島原爆の10倍以上の威力があり、過去最大級のものである。米軍の空中写真によれば、実験地域周辺では振動はもちろん、土砂まで流出させたように見える。愚かにも北朝鮮は自らの国土まで破壊しようとしているのである。