日本時間昨晩首都オスロ市庁舎内でノルウエィ国王夫妻らが出席の下にノーベル平和賞授与式が行われた。そもそも12月10日に授与式が行われるのは、賞の創設者アルフレッド・ノーベルの命日にあたるためである。日本被団協・田中熙巳代表委員ら3人が登壇し、ノーベル委員会委員長のフリードネス氏から3人にメダルと賞状が贈られた。賞金は約1億6千万円だという。2010年にノーベル化学賞を授与された高校の先輩、根岸英一博士がいただいたメダルは手に持たせていただいたことがあるが、いかにもずっしりと重く威厳を感じたものである。昨日の平和賞のメダルは直径6.6cm、厚さ5㎎、重さ196㎎だという。
田中代表のスピーチはかなり説得力のあるものだった。スピーチを聞いた人の間でも、かなり高い評価を受けていた。何といっても田中代表自身原爆被害者であり、長崎市内で原爆に被爆した際目にした生々しい実体験は、聞いた人にはかなり胸に迫るものがあったようだ。それは、授賞式会場外のパブリックビューイングを観ていた人々にも大分アピールしたようだった。ロシアが核を使用しそうだと非難したことについては、ロシア国内では、大学生が核兵器は国際舞台におけるロシアの権威を示すものだとして、世界の声を受け入れず、ロシア人としての言い分を述べるだけだった。これでは日本被団協の長年の努力とノーベル賞自体を軽視し、核戦争へ進ませるだけである。こういった一部の声をどうやって反省させ、核の恐ろしさを知らしめることが出来るかが、これから国際的に考えなければいけないことである。
ノルウェイの国会議員は、田中代表の語った原爆被災の生の報告に対して素晴らしく感動したとべた褒めだったが、被爆者が心身ともに苦しんだことや、国の補償を受けていないことを初めて知ったと驚いていた。終戦直前の当時ならいざ知らず、今以て知らなかったとの言葉には、少々ショックを受けたが、案外世界の核認識はこの程度でまだ初歩ではないかと思っている。
それでも良識ある人々からはスッキリと受け入れられたとスピーチの内容を評価していた。フリードネス委員長は、平和賞を日本被団協に授与するという決定は、核兵器は受け入れられず、2度と使用すべきでないという「核のタブー」と呼ぶ国際規範を形づくるうえで、彼ら被爆者の証言が重要だと見ているからだと語ったが、事実田中代表のスピーチは、充分その期待に応えていたと思う。核絶滅は難しいテーマだが、少しは世界の考えは変わってくれれば幸いである。このノーベル賞受賞をきっかけに遅々としていようとも核廃絶へ一歩一歩進むことを願って止まない。
また、国内外に戦争や嫌な事件が頻発しているが、その中でこのノーベル平和賞は明るくすっきりした印象を与えてくれた。流石に平和賞だけのことはある。